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第3回:信用調査とコンプライアンススクリーニングの活用

「知らなかった」では済まされない時代へ

近年、安全保障貿易管理や経済安全保障の実務において、取引先の信用調査やスクリーニング体制の整備は、避けて通れないリスク対策となっています。

  • 軍需関連企業との誤取引
  • 実体不明の商社を介した不透明な輸出
  • 日本法人との正規取引と思いきや、背後に制裁対象国の関与があった

このような事例は決して他人事ではありません。中村格付研究所では、以下の「8つのチェック項目」を軸に、信用調査の活用を強く推奨しています。

信用調査で確認すべき8つの項目

  1. 法人登記情報の正確性
  2. 経営者・役員の属性(政治・軍事・制裁リスク)
  3. 株主構成(実質的支配者=UBOの把握)
  4. グループ会社・関連会社の状況
  5. 販売先・仕入先の属性(エンドユーザー含む)
  6. 事業実態(オフィスの所在、従業員数など)
  7. 金融機関との取引状況
  8. 最新の裁判履歴・行政処分・ライセンス取消事例

特に中国・中東・旧ソ連圏との取引では、政治・軍事との接点を見逃さない調査が不可欠です。

Worldcheck等スクリーニングツールの活用

信用調査では把握しきれないリスク、たとえば「制裁対象」「PEP(外国政府要人)」「テロ資金供与者」等の情報を網羅的にチェックするには、WorldcheckやLexisNexis WorldComplianceなどのスクリーニングツールが有効です。

主要ツール比較

ツール名特徴
Worldcheck政府制裁リスト・PEP・FATF関連データを広範囲に網羅
LexisNexis犯罪組織・腐敗関連・暴力団関連にも強い
Dow Jones米国政府制裁リストを中心とした高精度マッチング

スクリーニングのタイミングと対象

  • 初回取引の前
  • 契約更新時・定期レビュー(年1回以上)
  • 国・業種・用途の変更時
  • 大型・高額案件の発生時

対象とするのは:

  • 顧客企業本人
  • その株主・UBO
  • 主要役員
  • 海外関連会社
  • エンドユーザー(最終使用者)

スクリーニングで”ヒット”したらどうする?

  • 原則:即取引停止
  • 経産省またはCISTECに速やかに相談
  • 対応記録と調査結果を社内文書化

調査結果と該非判定を結びつける

多くの企業が陥るのが、「該非判定と信用調査が別々に扱われている」ことです。しかし、実務上はこう結びつけるべきです:

「製品は非該当。用途確認書取得済み。Worldcheckで取引先・エンドユーザーに問題なし。取引可能と判断。」

このような一体化した判断文書こそ、監査・トラブル時の“実務の盾”になります。


次回(第4回)では、経済安全保障推進法の4本柱と、企業が実務で対応すべき観点について解説します。

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